Interview 「強い組織ほど正解を捨てる」著者インタビュー
INTERVIEW01 「強い組織は正解を捨てる」著者特別インタビュー。西坂勇人が自律型組織に行き着くまで
GCストーリーの代表取締役西坂勇人が「強い組織は正解を捨てる」を執筆しました。GCストーリーは時代に合わせ、組織のスタイルを変化させています。「トップダウン型」から始まり「理念型経営」。様々な学びを得て現在は自律型の組織運営がされています。その経験から自律型組織を目指す方向けに、在り方の成長と意識変容を促すサービス「ココシフ」の提供を始めました。インタビューでは書籍に関する内容から、ココシフのサービス内容まで幅広くお話を伺っています。
INTERVIEW02 自律型組織GCストーリーの実践と探求。「強い組織は正解を捨てる」
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「強い組織は正解を捨てる」を執筆されたと伺いました。内容について伺ってもよろしいですか?
僕自身の経営における実践と探求を書きました。複雑性や変化が激しい時代の中でかつての経営スタイルが対応し切れなくなっているんじゃないかと思っています。僕たちの組織づくりは「トップダウン型」「理念型」を踏まえて行き着いたのが「自律型」の組織運営です。社員の自律を尊重することで多様な人材がそれぞれの個性を発揮し始めました。職種ですと法人営業、施工管理、エンジニア、デザイナー、動画編集、PR広報、Webマーケティング、介護専門職、研修設計など。多様な人材が集まることで事業展開も看板施工から始まり、環境エネルギー、介護福祉、コワーキングスペースの運営、地域創生、組織デザインなど多岐に渡っています。
その結果として、ホワイト企業大賞や働き甲斐のある会社ランキングで5年連続受賞など、注目いただく機会が増えています。最近は経営者の友人からも相談を受けるようになり、アドバイスもしています。自律型の組織を作りたいけど、具体的にどうしていいか分からない。完全な答えではありませんが、僕たちの経験を踏まえて「経営者がどのように考えを変えていくか?」を書きました。 -
自律型の組織を目指す不安はどのようなものがあるのでしょうか?
そもそも経営者の不安として「会社が潰れてしまうんじゃないか」「数字が伸びないんじゃないか」はありますよね。さらに組織を自律型にすると「社員がバラバラになってしまうかもしれない」が大きくなります。
経営者は社会の変化も理解しているし、従業員に幸福になって欲しい気持ちも持っています。ただ、本当に社員が好き勝手にやったらバラバラになってしまい、会社が維持出来ないんじゃないか?と思ってしまう。だからこそ会社をコントロールしようとします。従業員の幸福を考えると矛盾しますが、コントロールした方が直近の業績は良くなります。しかし「利益を出したい」「上手く会社をコントロールしたい」のは結局経営者のエゴかもしれません。 -
帯にもある「真のボトルネックは経営者の思考にある」に繋がってくる部分でしょうか?
経営者に限りませんが、誰しもが元々崇高な想いは持っているんじゃないでしょうか。より多くの人に役に立って貢献出来る自分になりたい、と思っているはずです。
その考えは経営者も変わらず、起業当初は「世界にこういうインパクトを出したい」「何かを成し遂げたい」などの純粋な想いを持っています。同時に「自分の生活を守りたい」「給料が欲しい」「安定もしたい」も併せ持っています。しかし、会社が上手く行くほど保守的になります。自分の給料や会社の業績が下がるのは格好悪いじゃないですか。右肩上がりで売上が伸びていく姿を見せたい理由は何か?それは周囲に格好悪い姿を見せたくないんですよ。そして、その思考は普通なんですよね。
経営者仲間と深い対話をする中で、心にある2面性を感じます。実は不安な部分や怖い部分は、従業員に見せられないんですよね。「強い自分でありたい」「人がついてこないんじゃないか」「社員に幸せになってほしい」「社会貢献したい」など様々な面を同時に持ち合わせています。葛藤を抱えながらも、よりよい組織を目指したい方向けに読んでもらえると嬉しいですね。
INTERVIEW03 現代の論語と算盤で自律型組織を目指すサービス「ココシフ」
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GCストーリーの経営スタイルや変遷を踏まえて、自律型組織を目指すサービスを立ち上げたと伺っています。
様々な模索の結果だからこそ言えますが、ツールや仕組みだけ導入しても自律型の組織は実現が難しいと思います。 その意味では僕たちの試行錯誤が非常に活かされたサービスになっています。現代版の「論語と算盤」と言えるかもしれませんが、自律型組織を目指すにはどちらのサポートも必要です。
「論語」は個人が組織を自分ごととして捉える意識変容の促進を図る研修や対話を促す内容です。
「算盤」は数字と主体的なアクションを繋げる仕組みの管理会計をベースとした「自律経営システム」の構築になります。
同時に現在の会社がどのような状態にあるのか評価と分析が重要だと思います。
組織の心理的安全性や自律度を可視化する360度組織アセスメントツール
「TeamInsight」のシステムも提供しています。
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サービス展開の1つとして経営者向けの研修もやっていらっしゃると思うんですけど、具体的にどんなことをやられてるんでしょうか?
経営者に限らず、自分なりの正解を持っている人は多いと思います。どんな仕事でも何が正しいか分からず、仕事を進めるのは難しいですよね。経営者も同じで自分なりの経営スタイルや信念を持っています。
一方自律型の経営においては、従業員一人一人の内発性を大切にします。つまり従業員が出した答えと経営者の自分が出した答えが違ってきます。
強いリーダーが組織全体を引っ張っていくのが代表的な考えだと思いますが、その強いリーダーシップが自律型の経営を目指すと邪魔になってしまいます。一人一人の内発性を潰してしまうわけですね。従業員に自律して欲しい気持ちとコントロールしたい気持ちの矛盾に、経営者自身が気づきにくいんです。
「どのように自分の心をバランスさせていくのか?」みたいな話を僕たちの実践からお伝えしたり、対話をしています。もちろん自律型組織が絶対正しい訳でもないんですよね。トップダウン型で規律を固め、合理的に進める方法ももちろんあります。
自分自身がどのような経営スタイルを目指すのか一緒に考え、もし自律型の組織を本当に目指したとします。矛盾してしまう自分の気持ちに気づいた上で、経営者の意識が変わる必要があります。
もし自律型組織に興味ある方は僕たちの実践が何か役立てると思うので、お気軽に連絡をもらえればと思います。
西坂勇人
GCストーリー株式会社 代表取締役社長
1971年大分県に生まれ。宮城教育大学卒業後、看板会社専門の材料商社に入社。在籍中、当時まだ主流ではなかったインターネットに可能性を感じて社内で事業を立ち上げる。2000年、その事業で独立し、「看板ナビ」を立ち上げ。日本全国の看板業者をネットワークし、会員組織化し、1万社あると言われる看板業界のうち、4800社(2022年2月現在)が登録するサービスへと成長。2005年、サイベイト株式会社を設立し、代表取締役社長に就任(その後、GCストーリー株式会社に社名変更)。一方で、進化するテクノロジーと変わる環境のなかで「経営とはどうあるべきか」を常に考えつづけており、20年で1万人を超える経営者と対話を繰り返している。稲盛和夫氏が立ち上げた盛和塾で理念経営を学び、自立分散型組織であるティール組織を取り入れるなどした結果、「高エンゲージメント/低ストレス」な組織を実現。その成果は外部からも高く評価されており、2014年に「稲盛経営者賞」の非製造業第二グループ第1位に選出されたほか、2019年に「ホワイト企業大賞」大賞、2016~2020年に「働きがいのある会社ランキング」5年連続ベストカンパニーを獲得している。また、起業家の支援にも力を入れており、東日本大震災がきっかけで設立されたEO North Japanの理事も務めている。