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2023.04.26現実を変えるには?ティール組織の第一人者・嘉村賢州氏と学び合う越境体験【イベントレポート】

イベントレポート

2023年3月10日に開催された特別プログラム「越境寺子屋」の様子をお届けします。
組織論や各分野の最先端を牽引するゲストを招き、さまざまな背景を持つ参加者が交流し学びを創発する本プログラム。

当日は日本国内でも大ベストセラーとなった『ティール組織』(フレデリック・ラルー著、英治出版)の解説者でもあり、日本におけるティール組織の第一人者でもある嘉村賢州氏にお越しいただきました。
「組織の理想と現実の間で、どう行動するべきか決めきれない」
「合理性重視か人間性重視か、リーダー像のバランスが分からない」
こうしたお悩みをもつ方は、ぜひ最後までご覧ください。

■嘉村賢州氏のプロフィール

■モデレーター

合理性と人間性。両方が求められる時代の判断とは

会場には組織の拡大フェーズに直面する経営者、人材開発に苦戦する担当者、初めてチームビルディングに取り組むマネージャーなど、様々な悩みを抱える参加者が集まった。
会の冒頭では、嘉村氏がいかにして『ティール組織』の解説者を担うことになったのか、その経緯と半生が語られた。

嘉村:さまざまな組織やファシリテーションを経験する中で、人が集まって働く「組織」は、結局軍隊式からほとんど変化していないと気づきました。テクノロジーはボタン式の携帯電話からスマートフォンまで全く違う形に進化しているのに。ヒエラルキーに似ているものもあれば、全く違うものもある。そんな多様な組織があっていいのではないか、という想いが生まれました。

『ティール組織』は、ビジネスランキングの上位トップを調べるなどの普通のやり方ではない作られ方をしている。社員が幸せかつ顧客も喜んでいて、経済も回せているという世界中のユニークな組織事例をもとに書かれた書籍である。嘉村氏が興味を惹かれたのは、必然であった。

嘉村氏の話を聞き、参加者からはさまざまな感想や意見が寄せられた。その中でも多かったのは、社員が幸せな状態でいることが良いとわかってはいるが「とはいえ現実はそうもいかない」という葛藤だ。

嘉村:理想と現実、その間に立つのは正しいと思います。けれども、それを理想が51%で現実は49%というのか、理想49%で現実が51%とするかで、雲泥の差があるんです。「とはいえ」と言っているあなたがブレーキとなり現実の方に引っ張っていませんか、ということは結構ありえます。バランスが重要なことは大いに賛同しますが、理想が49になるのは絶対に譲れません。

「間に立ちながら、自分の今の振る舞いが49%なのか、51%になっていないかと問うと勇気が出ると思います。」と嘉村氏は続けた。

岩波:物事を進めるというのは論語とそろばんなので、人間性と合理性は絶対どちらも必要なんですよね。必要なんだけれども、優先順位を間違えちゃいけない。現代社会を見ていると、ミイラ取りがミイラになってるんです。すごく想いを持った人が立ち上げたベンチャーでも、やっぱり続けるためにはお金が必要。資金調達をしていく中で、合理性に寄った方が資金調達ができちゃったりするわけです。本当にこれを大事にしてやろうと思った人たちが、知らないうちに数字に囚われていくんですよね。

経営者の孤独、現場との衝突。どう乗り越えていけるのか

会の中盤では「経営者」「現場」などより具体的な視点を交えながら、組織をよりよくしていくための行動について語られた。

嘉村:『ティール組織』の後半に悲しい章があって、結局ティールはトップが変わらない限り無理だと言われているんです。ティールの要素を使った健全なオレンジや健全なグリーンは現場からでも作れますが、本当に理想のティールは現場がどれだけトライしてもトップが変わらない限り作れないという話があります。

萩原:仕事柄いろんな組織をサポートする中で経営者さんとお話をしていて、経営者さんは本当に本当に心の底から組織を良くしたいと思っているんですよ。話していると分かるし、社員たちに対しての愛情もすごく深い。けれども、やり方がわからないんですよね。もっと自律してみんなが幸せな組織にしたいと思っていても、メンバーから見るとワンマンに見えてしまったり

経営者と現場社員の間には、壁があるように感じる方も多い。その壁を乗り越える術について、「人を大事にしようと言いながらも、互いに障害物として見ていませんか」という問いかけがなされた。

嘉村:現場から見ると経営者って意見もコロコロ変わるし、想いはあるかもしれないけど人格はどうなんだとかね、いろいろあると思います。よく現場の方々が経営者を無視してうまくやっておこう、みたいにやろうとするんですけど、大抵うまくいかないんです。
経営者やリーダーは孤独なので、やっぱりどこか理解してもらえない感覚を持っています。経営者がどんな世界を実現したいかに対して、ちゃんと耳を澄ませる。実現したいことを本当にわかってくれる存在がいたらめちゃめちゃ心強いし、安心なんです。お互いがそこまで理解できたら、提案を聞く気持ちになれますよね。

萩原:経営者もただの人間ですから、組織を一緒によくしていきたい同志だと思えたら安心しますよね。

嘉村:説得して動かすよりも共感してくれた方が絶対的にがらっと変わります。相手にも家族がいて人生があって、何かしらの困難の中で役割をしている。自分の理想を阻む障害物と認識している時点で、オレンジやアンバーの世界観に染まっています。そこを脱して「人」対「人」で接するのは、実はアルコール依存症の人が断酒するぐらいすごく大変なんです。

自身の不安や恐れに向き合うことが、大きな一歩となる

経営者と組織にいる人が互いに深く理解した状態でいるには、「ありのまま」がキーワードになると萩原は言う。

萩原:組織の中で生きるってすごく難しいことですよね。リーダーだから、まだ若いからとか、みんな役割の仮面をかぶっています。「ありのまま」がキーワードだと思います。会社の中でもありのままでいられること。ありのままでいられなくても、自分が今ありのままでいられてないことに気づけるかどうか。そういった自己理解ができるかが重要だと思います。

参加者の一人からは、「ありのままを見せること」への率直な意見があがった。

参加者:部署でリーダーをしているんですが、本当は泣き言を言いたい、できませんと言いたいんだけど、リーダーだから絶対それはしていけないとも思います。どうやったらありのままの自分でいられるんだろうと、混乱しています。

嘉村:そこは色々なアプローチがあるし、難しくもあると思いますが、やはりその場の中の影響力がある人が自分を出す。勇気を持って一歩を踏み出せるかがあると思うんですね。
一つ例を挙げると、サンフランシスコにミレニアムスクールという学校があります。学校が同調圧力の世界になっている問題意識を持っていて、多様性と繊細さを出せるような場にしたいと取り組んでいます。クラスの中で、一番影響力のある担任がまず自己開示をするんです。実はこういうことで先生傷ついててとか、同僚同士でちょっときついことがあって、とか。子供に笑われるかなという不安を乗り越えてシェアするんです。そうすると互いにありのままを見せられる空間になっていく。

岩波:やはり人間って生物なので、恐れと不安を行動の源泉にして動く場面がすごく多いんですよ。多いんだけど、51%を愛や信頼にしたときにやはり世界が変わっていくんですね。
経営者もそうです。会社が潰れたら従業員を食わせられなくなるから、厳しいことを言いすぎたり。経営者でも弱みを見せられるということは、その人のことを本当に信頼しているということです。弱みを見せなきゃいけないわけじゃなく、見せたくなるような関係性になるといいですね。

今の話でいうと、自分の弱さを隠すために、無意識に合理性と効率性とお金を使っていることが多いです。みんな本当は気付いているんだけども、そこに向き合わない方が楽だから、合理性とかお金の世界の方を優先してしまっている部分もすごくある。でもそれが今の社会の限界にも繋がるので、弱さに向き合わざるを得ない時代に入ってきていると思います。そういうことを乗り越えた経営者が作る会社が、やはり結果としては良い会社になると思います。

ティール組織の第一人者・嘉村賢州氏をお招きし、組織や経営者の在り方、信頼関係について深い対話がなされた本イベント。

嘉村さんのお話にあった学校を組織に置き換えると、一番影響力のある人物は経営者だ。人間性と合理性がバランスされた良い組織を作るためには、経営者の自己開示と変容、そして従業員との信頼関係。この3つが重要だという示唆があった。理想と現実、自分の中での比重が今どうなっているのか。そしてどうしていきたいのか。参加者はそれぞれの組織に持ち帰り、よりよい組織に向けた一歩を踏み出している。

ココシフでは、今後も人と組織のよりよい在り方を探究し、自律共創型組織へのサポートをし続けます。

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