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2023.08.22経営者の人間的成長が社員を成長させるーパスカリアグループCEO・瀬川草氏の挫折と成長の物語【イベントレポート】

イベントレポート

2023年6月21日に開催された特別プログラム「越境寺子屋」の様子をお届けします。
組織論や各分野の最先端を牽引するゲストを招き、さまざまな背景を持つ参加者が交流し学びを創発する本プログラム。

今回は、「自分・組織がどう在りたいかに情熱を捧げる」パーパス経営を実践し、発展途上国にIT事業を展開しているパスカリアグループCEO瀬川草さんにお越しいただきました。瀬川さんは、東京本社のある神田において中小ソフトウェア企業とともに「神田バレー」というユニークな共同体の創造にも取り組んでおられます。

「経営者が弱みを見せることが大事と聞くが、なぜなのか」
「もっと社員に自発的に動いてほしいが、何をやっても効果がない」
こうしたお悩みをもつ方は、ぜひ最後までご覧ください。

エンジニアでも野球でも挫折。「ポンコツ」だから、社員が育つ

国内外6拠点9箇所でITサービスを展開し、2022年には売上高10億円を突破。右肩上がりの成長を見せるパスカリアグループだが、CEOを務める瀬川氏は「僕はポンコツなんですよ」と繰り返した。

瀬川:瀬川草といいます。座右の銘は「座して死を待つより、華々しく散る」。基本、考えるよりも行動派です。皆さんの自己紹介を聞いて、僕も鎧を脱いで裸にならないといけないと思いまして、お話させていただきます。僕はポンコツなんですよ。大学を卒業してエンジニアになったんですが、誰もメンテナンスできないくらいひどいコードを書いていた。30歳ぐらいまではエンジニアしてたんです。このままやっていても誰も幸せにすることはできないし、世の中を変えることができない。それが人生3度目の挫折でした。

エンジニアの他にも野球、マネジメントなど、瀬川氏は挫折の多い人生を歩んできた。しかしその自己開示が周囲にもたらすものは想像以上に大きい、と岩波氏は話す。

瀬川:僕みたいに野球でもエンジニアでもポンコツだった人でも、鎧を脱いで裸になると優秀なエンジニアが助けてくれるんです。僕自身はあまり何もやってないです。既存事業から新規事業にみんなが向くような仕掛けぐらい。実際、皆が全部やってくれる。

岩波:マネジメントってどうしても、資本主義的な世界観の中で組織をどう生き残らせるか、どう成長させるかに意識を持っていかれますよね。でも稲盛和夫さんも言っているけど、実は経営の本質は経営者が自分と向き合って、自分をさらけ出して成長している姿を社員に見せることでしかない。


岩波:この姿を経営者が見せるから、社員が本当に成長する。だから、社員を本気で信頼して任せることができる。鎧を着たままどうにかしなきゃと不安と恐怖感で動くと、スキルに依存する経営ができあがるわけです。そうすると、ますます社員の前でマウンティングをしたくなる。社員は自律できていないから、社長は社員を本気で信頼できなくなるんです。任せると言いながら任せないんです。だから社員が本当の意味で責任を取れるまで成長しない。成長しないから本当にうまくいかなくて、やっぱりダメなんだと、これを繰り返す。このサイクルは多くの経営者が悩んでいることなんです。

萩原:さっき瀬川さんが「自分自身はあまり何もやってない」と仰っていましたが、たくさん内省されてリーダーとして何も怖くない状態になっているんだと思います。その域に達するまではやはり自己内省が必要で、裸になって向き合いながらやっていくとたどり着けるんです。

瀬川:確かに社員が「瀬川さんここ変わって良くなったよね」とかめっちゃ言ってくれるんです。すごく嬉しいです。

瀬川さんのような「自己内省し、開いている状態」になっていくことが、経営の本質に繋がる。とすると次の関心は、どうやったらそんな状態に近づいていけるのか。参加者からも瀬川さんの自己開示力について質問が上がった。

参加者:鎧を脱げるようになったのは何かきっかけがあったのかお聞きしたいです。自分は今チームリーダーをしていて、できない姿を見せるのはメンバーを不安にさせるのではないかと思ってしまいます。

瀬川:僕、人生ずっと挫折しているじゃないですか。どこかで思ったんです。カッコつけてるな、カッコつけてるから挫折してるんだなって。そこからできないこと、弱みを皆に見せてすごく楽になりました。コーチングや対話で気づかせてもらってから、できないと言えるようになりました。自分ができないことをどんどん言って、周りが救ってくれる。それがチームとしてのパフォーマンスを高めて、成果が出ていると思います。

企業初のノーベル平和賞を目指して

瀬川氏がCEOを務めるパスカリアグループは、「企業初のノーベル平和賞を目指す」と公言している点もユニークだ。そこに至るまでには瀬川氏が経験した多くの出来事が線となって繋がるタイミングがあったという。

瀬川:海外で仕事を始めたとき、日本人のエンジニア、ベトナム人のエンジニアと同じチームで仕事をしました。そこでお互いが一緒に働く価値を上げられないことへの違和感がありました。顧客もハッピー、日本人もハッピー、もちろんベトナム人もハッピー。今そういう会社を目指してやっております。

瀬川:最近はコーチングしてもらいながら、パーパス経営を始めています。金融システムがいっぱい作られて社会が変わっていくとか、大量にモノを消費して生産して環境を悪化させるとか、限度がない資本主義ですよね。結局また新しい資本がそこに生まれて、その資本によって僕らはひたすら働かされて、時間を奪われていく。こういう欧米型の資本主義をずっとやって日本が価値を上げていけるのかを考えたときに、失われた30年というのはその失敗例なんじゃないかな。続けてはいけないと思っています。

瀬川:価値を生み出す人がいて初めてお金の価値がつくわけであって、これだけグローバルにインターネットで繋がって金とモノが溢れている時代に、価値が高いのは「人」だと思います。人と繋がって共存することを基点として持続可能な新たな価値を一緒に作る。僕らが持っていない価値をベトナム人やラオス人が持っている。彼らと一緒のチームで何かモノを作ることによって、GDPや金融システムじゃ測れない新しい幸せの形が作れるんじゃないかと思います。

瀬川:「企業初のノーベル平和賞」を思いついたのはバリ島のサヌールという場所でした。歩いていたときにハッと「ノーベル平和賞だ!」と。バリという場所も、資本主義ではなくSDGsが当たり前の空気感があって、世界中から経営者が集まっているんです。

海外というフィールドで新しい時代の兆候や、人の持つ価値を感じてきた瀬川氏。ノーベル平和賞への土台作りとして、自社では禅の「利他」の考えを礎にフラットな組織体制を築いている。

瀬川:禅の考え方、利他の精神は、やはり日本にすごく根付いているカルチャーです。パスカリアも創業時から「人を中心に据える経営理念」があったんですけど、抽象的すぎて現場で人を統率できない問題がありました。理念があっても結局は組織や人事制度って階層構造。そこに矛盾が生まれているから、利他の精神を生かしきれていないんじゃないかと考えました。

「プールの監視員」が、自分の役割かもしれない

松田:瀬川さんのイメージは番人のよう。組織が大事にしたい価値観から逸れそうになるときにピピーって鳴らす役割。プールの監視員みたいなイメージですね。

萩原:楽しくてゆるい組織じゃなくて、組織の変化を楽しむ組織、ですよね。心理的安全性という言葉をゆるい組織と捉える方もいるんですけど、そうじゃなくて厳しい部分もありながら成長させていく。

瀬川:皆と何か成し遂げたときに飲むビールがうまいじゃないですか。プロ野球選手が優勝した後にするビールかけってすごく楽しそうなシーン。それが近いかもしれないですね。そのためには、常に時代が変わっているので自分も組織も変わっていかないと、価値あるものを社会に提供できない。

モデレーターの1人である松田氏が放った「プールの監視員」という表現が、瀬川氏の中でしっくりきたようだった。数字目標も計画も予算もないという話に参加者から質問が上がる中、瀬川氏が見ている世界は違っていた。

参加者:ビジョンを掲げてそこに到達させるのも経営者の責任だと思うんですが、その責任をどう捉えているのか気になります。

瀬川:考え方としては皆で共同体だと思っています。皆がどうありたいかとか、毎日今この瞬間を楽しんでいるというのがプールの監視委員として確認できていれば、それで責任を果たしているのかもしれないです。ポンコツだから難しいこと言われてもできない(笑)

萩原:フェーズがあります。ここまで達されている方はなかなかいらっしゃらない。私も色々な組織をサポートする中で、この感覚で経営者が経営できるってなかなかないです。

瀬川:うちの会社、新入社員は教育プログラムを自分で選ぶんですよ。何をやってもいいです。その代わり、プールの監視員の役割はしていて、ゆるいなって思うと呼んで1on1したり。方向性はやっぱり組織として揃えていかないと、年収の格差をなくしている意味がなくなっちゃう。一体感を作ってどんどんアイデアをプラスして世界中に広めていくっていうのはかなり話しています。

萩原:育てる期間って、労働力にならない期間。それを全然気にせずやってるわけじゃないですか。

瀬川:納期を守れないとか、メール1週間忘れちゃうとか、何でやらないんだろうというのは僕はずっと話しています。やりたくないんですとか、そんな話をしてる感じ。一人ひとりと向き合えるのは200人まで、それができるのが僕らの強み。ひたすら伴走していつか気付いていくんじゃないかなと。挫折ばっかりしているから、粘って戻す力はあるんです。

萩原:どうありたいかが定まっていれば戻せますよね。そこが定まっていて会社の方向と一緒だったら問題ない。

瀬川:そうです。乗っかったら全部任せます。最初にちょっとマイクロマネジメントするけど、一気に伸びます。採用でも能力よりもスタンス重視というか、いい人を取ります。だからいい人がまた育って、してもらったことに対して恩返しするサイクルになっているかもしれないです。

岩波:いい意味で、社員自身が自分の人生に責任を持てる状態を作ってますよね。一昔前の経営者って、社員はオレたちの子供だからって逆に社員の自律を妨げることがよくあった。親が全部やってあげるんじゃなくて、自分で責任を取れる環境を作ってあげることはすごく重要。

岩波:この会でよく話す、ノルウェーの刑務所の話があります。かなり端折りますけど、ノルウェーのある刑務所では囚人を囚人として扱うというより、一人の人間として扱うんですよ。囚人服を着せるわけでもないし、牢屋に入れるわけでもない。家を与えて普通に生活してもらうんです。結果的に言うと、そのノルウェーの刑務所とごく一般的な刑務所を出た後の再犯率を比べると、ノルウェーのほうが半分なんです。瀬川社長が言っていることと、今言ったことが全く一緒で、人は扱われたようになる。もう一つ、人は扱われたように人を扱う。だから、否定され続けた人は結局外へ出たときも相手にあれが出来てない、これが出来てないと言う。どこがスタートか分からないけど、やっぱり新卒をかわいがるとかは自分がされて開いていったし成長できたのが大きいから、恩返しのサイクルが起こるんですよね。

最後に、瀬川氏の人生のスタンスについての参加者からの質問に、瀬川氏らしい回答をいただいた。

参加者:瀬川さんはどのように自分のスタンスや指針を決められてきたのでしょうか。

瀬川:そういうのって考えても決まらなくないですか。僕で言えば、座して死を待つよりも華々しく散る。ポンコツでとにかく打率が悪いですが、打席立ちまくれば安打数は勝てるかもしれないです。打てなかったときは課題をちゃんと考える。打率がいくら低くても回数を増やすと絶対増えるじゃないですか。やりまくるとだんだん慣れてきますので、失敗してもいいんです。そしたら、何か新しいものが生まれる。また成長できるんです。いつか化学反応が起きると信じている。点と点が繋がって、ノーベル平和賞だ!に繋がる。世界中に会社を作って、自分もそうやって成長させてもらったから皆にも提供したいです。その感覚を作るのが僕の仕事で、そこにしか専念していません。

「自分はポンコツだ」と笑って話す瀬川氏の背景には、多くの挫折と成長があった。経営者が自分の弱さと向き合い、本当の意味で社員が自律し同じ未来に向かって笑顔で進む様子は、これからの時代の幸せな会社の在り方の一つだと強く感じる。パスカリアグループが企業初のノーベル平和賞を受賞する日を、今回の参加者たちは待ち望んでいるだろう。

幸せな組織を増やすために、ココシフでは今後も人と組織のよりよい在り方を探究し、自律共創型組織へのサポートをし続けます。

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