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2023.06.30内側から湧くエネルギーで生きるー音声メディア「VOOX」編集長・岩佐文夫氏の人生哲学【イベントレポート】

イベントレポート

2023年5月18日に開催された特別プログラム「越境寺子屋」の様子をお届けします。
組織論や各分野の最先端を牽引するゲストを招き、さまざまな背景を持つ参加者が交流し学びを創発する本プログラム。

今回は、音声メディア「VOOX」編集長を務める岩佐文夫氏にお越しいただきました。岩佐氏はこれまで多数のビジネス書の編集にかかわり、世界50ヵ国以上のビジネス・リーダーが愛読するマネジメント誌『Harvard Business Review』の日本版編集長を歴任しています。

「数々の成果を出すビジネスパーソンの考え方を知りたい」
「内発的なエネルギーで生きるとはどういうことなのか」
こうしたお悩みをもつ方は、ぜひ最後までご覧ください。

想定外の出会いの連続が、大きく人生を変えた

数々のヒット作を生み出し、2012年から2017年まで世界的な有名雑誌の編集長を務めていた岩佐氏。天職のように感じられる「編集者」という仕事だが、元々出版や編集を志していたわけではなかったと明かされ、参加者を驚かせた。

岩佐:サラリーマンの両親に生まれて大阪と東京で過ごしました。大学3年生のとき、たまたま知り合った先生がインドに行くことを勧めてくれて、人生初の海外旅行が1ヶ月のインド生活でした。当時は、日本みたいな恵まれた国に育った自分が、世界に何かできることはないか?という問題意識があってインドに行きました。

インド人と話す中で、貧しい国のために何かしなきゃいけないと思った自分がおこがましいと感じたんです。経済的に豊かだから、貧しいからということが決定的な人生の差ではないんじゃないかと考えながら帰ってきて、その経験があったから逆に就職する気がなくなっちゃった。企業に勤める意味が分からなくなってしまったんです。ウジウジと大学4年生の冬まで進路が決まらず、とにかく就職しろと周りに心配されて誘っていただいたのが日本生産性本部。そこが僕の社会人のスタートでした。

海外に関われる部署があったのでそこに配属希望を出したんですけど、配属されたのは出版部でした。国語の授業でいい成績は取った経験がないし、どちらかというと算数や数学のほうが得意。平仮名を書けるようになったのは小学校3年で、大学卒業するまでに読んだ本は多分20冊ぐらいしかない。それでも、編集の仕事をしてみたら面白かったんです。

何が面白いかって、普通に過ごしていたら出会えない人に会えるんです。自分が大学のときに読んだ本の著者に会えるんですよ。あとは自分が企画した本が本屋さんに並ぶと、それだけで感動ですよね。その本が売れると、みんながその本について語り出して「僕の本」から「社会の本」になる。自分から離れていく感覚がすごく面白くて、中には僕がその本の編集者だと知らずに、本について熱弁してくる人がいるんですよ。そういうのが嬉しくて、夢中で仕事をしていたのが20代、30代です。今は編集はもういいやと思って、新規事業開発などを仕事にしていますが。

どこまでいっても「ワクワクできるか」で人生の選択を行う

岩佐氏は編集者として順調にキャリアを重ねた。ダイヤモンド社への転職を経て、『ハーバード・ビジネス・レビュー』編集長となり、しかしわずか5年でその立場を手放した。「徹底的に飽きやすいんですよ」とあっけらかんと話す姿に、参加者が質問を重ねた。

参加者:それだけいろんな編集の仕事をされていて、編集はもういいやと辞めたのはなぜでしょうか。

岩佐:飽きてたんですよ。今思うと、多分編集長になる前から飽きていた。マンネリ化している自分に気づいていました。2012年に役員から編集長をやらないかと言われ、いろいろ条件を出したら、全部受けるからと言われてこれは本気だ、やらなきゃいけないと思って編集長をやろうと思いました。その条件の一つが5年限定でした。『ハーバード・ビジネス・レビュー』の編集長ってビジネス誌の編集者の中で頂点ともいえる仕事なんです。こんな仕事をやらせてもらえるなら精一杯やろう、悔いのないようにやろう、だからきっぱりやめよう。そういう論理でした。

飽きてたというのは、編集者として300冊以上作ってきたしマネジャーとしても関わった本が1500冊は超えているんですね。そうなると、パターンが見えてくるんです。逆に新しい発想も出にくくなってくる。仕事をしても自分にとってチャレンジがない。ここを離れないといけないと思ったんです。慣れないことをやるのはドキドキもしますが、やっぱりワクワクするじゃないですか。自分にとって不慣れなドキドキは、実際にやってみると成功とか失敗とかを別にして、とても充実感があります。自分の世界が広がったような。だから、慣れないことをやりたい。今もそうです。

岩波:僕は愛を込めて「ヘンタイ」と呼ばせていただきたい。ヘンタイって絶対に居座らないんです。世の中の人からすると何故そんないいポジションを手放すのかと思うことも、つまんないじゃんと言って手放すんです。

岩佐:「ダイヤモンド社の岩佐です」「ハーバード・ビジネス・レビューの岩佐です」というのは、すごくパワーがあるわけです。世界的にそうなので、海外でもそれだけで役員に通されたりスピーチしてくれとか言われるぐらい。この肩書を取ったらどうなんだろうってずっと思っていました。僕はどんだけ下駄を履かせてもらってるんだと確かめたかった。あと下駄を履かせてもらうってすごく貴重なんです。僕もそれで成長させてもらいました。なので、僕以外の若い人にも経験させたいって思ったんですね。若い人に下駄履かせると絶対伸びますから。

参加者:ほとんどの人は下駄を脱ぐことに恐怖を感じると思うんです。なぜ岩佐さんは恐怖を感じなかったのでしょうか。

岩佐:僕は自信があるわけではないんです。楽観的な一方で、すごく悲観的でもあります。常に最悪を考える。下駄を脱いだときの最悪を考えると、何の仕事も来ないことだったんですよ。だったらどこかに転職したらいいと思った。最悪のケースでそれなら全然構わない。タクシー運転手でも何でもする気概があったし、僕にとって最悪のリスクはその程度だと認識しました。その上で、最悪のケースになっても「自分がなんぼのものなのか」がわかるという収穫は必ずあるんです。
自分が大事にしたいことは何か?と考えたときに、僕は自分が大きな価値を出したり成功するよりも、自分がワクワクしていることを優先している感じなんです。試してみたいという欲求を封印すると精神衛生上よくないので。

やらなければならないことにも、欲張りな思考を

全体に向けての話が終わり、終盤では岩佐氏も混じってテーブルごとに感じたことを話し合った。岩佐氏の人生や考え方に刺激を受け、テーブルでは感性や好奇心について様々な角度から質問が飛び交った。

参加者:ワクワクを大事にしているというのは、子どもの頃の好奇心がそのまま持続している感じなのでしょうか。

岩佐:結果的にそうなんですけど、好奇心を貫こうと思ったことも、維持しようと思ったこともない。僕は将来何になりたいか全く考えていなかったし、今も考えていません。長期的なことは考えられない。でも結果的に、こんな楽しい社会人生活になるとは思ってなかったという実感があります。なので、目の前の楽しいことに夢中になればきっと将来、思いも寄らない面白い世界が待っているという確信がある。飽きやすいからこそ、どうやったら飽きないかばっかり考えてるんですよね。

参加者:遊ぶ子供を見ていると、自由で感性が豊かだなと感じます。大人になるにつれ、感性がへし折られてしまっている感覚があります。

岩佐:やりたいだけではなく、やらなきゃいけないこともあります。やらなきゃいけないをどうするか。僕ね、自分で遊ぶのが上手いと思ったことはある。掃除でも自分の中でゲームをして遊ぶとか、何事も楽しむことにはえらい自信があった。つまらないことを頼まれたときも、何か自分で見出そうとしていました。

参加者:「やりたくないことはやらない」という方向にはならないんですか。

岩佐:社会にとって無駄だと思うことはやりません。こんなものを世の中に残したってしょうがないじゃんと思うものはやらないし、そういう仕事は潰す。でも誰かがやらなきゃいけない仕事は楽しくやることを考えています。そんなにぶっ飛んでいるとは自分で思いません。一石二鳥が好きなんですよ。どうせやらなきゃいけないなら楽しもう、どうせ働かなきゃいけないなら楽しみたい。真面目に働くだけではつまらなくて、欲張りなんです。

自分の内側から湧く「ワクワク」を持って仕事をする。どうしたらそんな生き方ができるのか悩む社会人たちに、岩佐氏はこれからの考え方を提示した。

岩佐:僕も失敗は山ほどあります。離婚してますし、部下がうつ病になったこともあるし、ごめんなさいじゃすまない失敗もありますけど、しょうがないですよね。開き直るわけではないけど、人間って人を傷つけながら生きる罪深い生き物だと思っています。
身も蓋もない話をすると、自分のやったことに自分で納得できるか。人から言われるのではなく、自分に対してお前よくやっているな、お前ズルしてないよなと思えるか。そう思えれば、次に進めるんじゃないですかね。失敗って大したことないですよ。

本当にやりたいかどうか、自分で考えてみてください。何をやりたいのか、本当にやりたいのか。周りから評価されなくてもやりたいかどうか。他者との関係がなくてもやりたいかどうか。そんな選択ができると自信がついてくると思いますよ。

岩佐氏との対話は、組織やチームを考える前に、一人のビジネスパーソンとしてどう生きていきたいのか。そんな問いかけをもらった時間だった。真面目に結果を出すだけではない、楽しさも取り入れる一石二鳥の欲張りな考え方。その欲張りの部分に、「本当にやりたいことは何か」のヒントが隠されているのだろう。

経営者であっても、組織で働く個人であっても、組織においてやらなければならないことはある。では欲張りになるとしたら、本当は何をやりたいのか。ワクワクの根源は人それぞれだ。内側から湧いてくるエネルギーで生きられるように、自分との対話を続けたい。

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